「資格を取って収入を上げたい。でも資格取得中の収入が心配」——そういう葛藤を持つシングルマザーに知ってほしい制度があります。月10万円前後の給付金をもらいながら資格取得できる「高等職業訓練促進給付金」と、受講料の60%が戻る「自立支援教育訓練給付金」の2制度です。
この記事では、2制度の違い・対象資格・支給額・申請方法・働きながら使えるか・もらえないケースを横断的に整理します。ハローワークに行く前の事前知識として活用してください。
母子家庭が使えるハローワーク職業訓練と給付金の2種類

まず「高等職業訓練促進給付金」と「自立支援教育訓練給付金」の2つの制度の全体像を把握してください。どちらを使うかは「取りたい資格の期間」で判断するのが基本です。
2制度の比較早見表
| 高等職業訓練促進給付金 | 自立支援教育訓練給付金 | |
| 向いている人 | 看護師・保育士・介護福祉士など2年以上かかる国家資格を目指す方 | 簿記・医療事務・ITパスポートなど数か月で取れる講座を受講したい方 |
| 対象 | 2年以上の養成機関(学校)に通う課程 | ハローワーク指定の教育訓練給付講座 |
| 支給額 | 月10万円(非課税世帯)・月7万500円(課税世帯) | 受講料の60%(上限20万円) |
| 支給期間 | 修業期間中(最長4年) | 受講修了後に一括支給 |
| 申請先 | 市区町村の福祉担当窓口 | 市区町村の福祉担当窓口 |
| 申請タイミング | 入学前に事前申請が必須 | 受講前に事前相談・承認が必須 |
「看護師・保育士・介護福祉士など2年以上かかる資格→高等職業訓練促進給付金」「簿記・医療事務など数か月の講座→自立支援教育訓練給付金」というのが選択の基本的な目安です。
どちらも「ハローワークではなく市区町村の福祉窓口」が申請先
記事タイトルに「ハローワーク」を含めていますが、これら2制度の申請先はハローワークではなく市区町村のひとり親担当窓口(子育て支援課・福祉担当等)です。
ハローワークは「求人紹介・公共職業訓練・教育訓練給付金の指定講座検索」を担当しており、別の機関です。この2つは連携しますが、混同しないよう注意してください。詳しくはH2-6で整理します。
高等職業訓練促進給付金・自立支援教育訓練給付金の申請先は「市区町村の福祉窓口」です。ハローワークでは申請できません。
母子家庭向け高等職業訓練促進給付金の対象資格・支給額・申請方法

2制度の中で最も支援額が大きく・長期的なキャリアアップにつながるのがこの制度です。詳しく整理します。
対象資格と期間の目安
対象となる資格は「養成機関のカリキュラムが1年以上の課程を修業する国家資格等」が基本です。
| 資格の例 | 一般的な修業期間 | 備考 |
|---|---|---|
| 看護師 | 3年(准看護師は2年) | 通信制でも対象になる場合がある |
| 保育士 | 2年 | 大学・短大・専門学校等 |
| 介護福祉士 | 2年 | 実務経験ルートは別途確認 |
| 理学療法士・作業療法士 | 3〜4年 | 大学・専門学校等 |
| 歯科衛生士 | 3年 | 専門学校等 |
| 社会福祉士 | 2〜4年 | 大学・専門学校等 |
| 調理師・製菓衛生師 | 1〜2年 | 専門学校等 |
通信制でも対象になる場合がありますが、資格・養成機関・課程によって判断が異なります。「この資格・この学校は給付対象になりますか」という確認を入学前に必ず市区町村の窓口で行ってください。対象資格の詳細一覧はこども家庭庁のページを参照してください。
参考:こども家庭庁|ひとり親家庭等関係
支給額の目安
| 世帯の課税状況 | 在学中の月額給付 | 修了後の一時金(修了支援給付金) |
|---|---|---|
| 住民税非課税世帯 | 月100,000円(修学最終年は月140,000円) | 50,000円 |
| 住民税課税世帯 | 月70,500円(修学最終年は月110,500円) | 25,000円 |
2024年度から対象要件が拡充され、課税世帯でも利用できるようになっています。「非課税世帯じゃないから対象外」と思っていた方も、一度窓口で確認することをおすすめします。
2026年度の金額については、最新情報を市区町村の窓口またはこども家庭庁のページで確認してください。
申請のタイミングと流れ
最重要の注意点:申請は養成機関への入学前に完了させることが必須です。
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| ①市区町村の窓口に事前相談 | 「高等職業訓練促進給付金について相談したい」と電話予約して来庁 |
| ②対象確認・申請書の入手 | 取りたい資格・入学予定の養成機関が対象になるか確認 |
| ③必要書類の準備 | 申請書・戸籍謄本・住民票・児童扶養手当証書の写し・収入証明書等 |
| ④申請の承認を受ける | 承認が下りた後に養成機関に入学する |
| ⑤入学・在学中の給付開始 | 承認月から給付が開始される |
入学後に申請した場合、入学から申請承認までの期間分の給付は受け取れません。養成機関への入学前に必ず申請を完了させてください。

母子家庭の高等職業訓練促進給付金が「もらえない」ケースと対策

「もらえると思って申請したらもらえなかった」というトラブルを防ぐために、もらえないケースとその対策を整理します。
入学後に申請した場合・事前申請を忘れた場合
高等職業訓練促進給付金は「申請が承認された月以降」からしか支給されません。入学後に申請した場合、入学から申請承認までの期間分は受け取れません。
例えば4月に入学したのに8月に申請すると、4〜7月の4か月分(約40万円相当)が受け取れなくなります。「入学が決まってから申請すればいい」という思い込みが最大の落とし穴です。養成機関が決まったらすぐに市区町村の窓口に連絡してください。
雇用保険の育児休業給付金・失業等給付金を受給中の場合
雇用保険の給付金(育児休業給付金・失業等給付金等)を受給している期間は、高等職業訓練促進給付金との併給ができない場合があります。
どの給付金を受給中か・いつまで受給予定かによって判断が異なります。「今、雇用保険の給付金をもらっているが高等職業訓練促進給付金も使えるか」という状況は、市区町村の窓口で必ず確認してください。「もらえない」と思い込んで諦める前に、相談だけでも行くことをおすすめします。
対象外の資格・養成機関を選んだ場合
通信制・通学制どちらも対象になる場合がありますが、養成機関・課程によっては対象外になるケースがあります。
「この養成機関に通えば必ず給付が受けられる」とは限りません。入学前に必ず「この養成機関・この課程は給付対象になりますか」と市区町村の窓口で確認してから入学申込みをしてください。学校側に確認するより、市区町村の窓口に確認する方が確実です。
入学前の窓口確認なしに養成機関への入学・給付申請をするのは非常にリスクが高いです。必ず事前相談を行ってください。
母子家庭が働きながら高等職業訓練促進給付金を使えるか

「働きながらでも給付金をもらって資格が取れるか」——この疑問への答えは「原則として可能」です。ただし現実的な注意点もあわせて整理します。
原則として就業しながら受給できる
高等職業訓練促進給付金は就業状況を問わず受給できます。就業中でも・パート勤務でも・フリーランスでも申請できます。
「仕事を辞めなければ使えない」という思い込みは誤りです。在職中のシングルマザーが最も活用しやすい制度の一つです。ただし養成機関の修業課程が「昼間課程」であることが条件になるケースが多く、通信制でも可能かどうかは資格・養成機関によって異なります。「働きながら通える夜間課程・通信制が対象になるか」は、市区町村の窓口に確認してください。
就業中でも申請できます。「仕事を辞めなければ使えない」は誤りです。ただし通える課程が対象かどうかは事前確認が必要です。
働きながら通う場合の現実的な注意点
「使える制度かどうか」とは別に、「実際に続けられるか」という現実的な視点も重要です。
仕事・育児・学校を同時並行することは体力・時間の両面で大きな負担になります。「職場に通学を相談する・勤務時間の調整が必要になる場合がある」という点を事前に把握しておいてください。養成機関によっては夜間・通信制の課程がある場合もあります。「週何日登校が必要か・実習はどのくらいあるか」を入学前に確認した上で判断することをおすすめします。
母子家庭向け自立支援教育訓練給付金の対象講座・支給額・申請方法

高等職業訓練促進給付金よりも短期・気軽に使える制度です。「まず一つスキルアップしたい」という方に向いています。
対象講座と支給額の目安
自立支援教育訓練給付金の対象は、雇用保険の教育訓練給付金の指定講座です。受講料の60%(上限20万円)が受講修了後に支給されます。
| 対象講座の例 | 目安の受講期間 |
|---|---|
| 医療事務・調剤薬局事務 | 3〜6か月程度 |
| 簿記(日商簿記2・3級) | 3〜6か月程度 |
| 介護職員初任者研修・実務者研修 | 1〜6か月程度 |
| IT・パソコン系(MOS・ITパスポート等) | 3か月〜1年程度 |
| 宅地建物取引士(宅建) | 6か月〜1年程度 |
| ケアマネジャー | 6か月〜1年程度 |
対象講座はハローワークの窓口または厚生労働省の「教育訓練給付制度講座検索」サイトで確認できます。受講前に「この講座は自立支援教育訓練給付金の対象になりますか」を市区町村の窓口で確認してください。
参考:厚生労働省|教育訓練給付制度
【注意】受講前に必ず市区町村の事前相談が必要
自立支援教育訓練給付金も、受講後に申請するのではなく受講前に市区町村の窓口で事前相談・承認が必要です。
「受講し終わってから申請すれば給付してもらえる」という思い込みは誤りです。受講前に承認を受けていない場合は給付されません。「受けたい講座が決まったら、まず市区町村の窓口に相談する」という順番を守ってください。
母子家庭が使うハローワーク職業訓練と給付金制度の違い
「ハローワーク」と「市区町村の給付金」は別の機関・別の制度です。この2つを混同すると手続きがうまくいきません。
ハローワークの公共職業訓練は「失業中」が基本的な条件
ハローワークが実施する公共職業訓練(パソコン・IT・医療事務等)は、雇用保険の受給資格がある・または求職中であることが基本的な条件です。
在職中のシングルマザーは公共職業訓練の対象外になる場合が多いです。一方、高等職業訓練促進給付金は在職中でも使えます。「今仕事をしているから職業訓練は使えないと思っていた」という方は、高等職業訓練促進給付金の方を検討してください。
ハローワークで相談できることと市区町村窓口で相談できること
| 窓口 | 相談できること |
|---|---|
| ハローワーク | 求人紹介・公共職業訓練への申込・教育訓練給付金の指定講座の検索・マザーズコーナーでの就労相談 |
| 市区町村の福祉窓口(子育て支援課等) | 高等職業訓練促進給付金の申請・自立支援教育訓練給付金の申請・ひとり親向けの支援制度全般 |
「まず市区町村の福祉窓口に行って給付金制度を申請し、講座・資格の情報収集にはハローワークも活用する」という使い分けが実務上の正解です。どちらか一方だけでなく、両方を目的に応じて使い分けてください。
参考:厚生労働省|マザーズハローワーク事業

まとめ:給付金を活用した資格取得の最初の一歩
母子家庭が使える資格取得支援制度の2本柱は「高等職業訓練促進給付金(長期・専門資格向け・月10万円前後)」と「自立支援教育訓練給付金(短期講座向け・受講料60%補助)」です。どちらも申請先は市区町村の福祉窓口で、事前相談・事前申請が必須です。
「働きながら使えるか?」という疑問への答えは「原則として可能」です。ただし入学・受講前の事前申請を忘れると給付を受けられなくなります。
まず「どちらの制度が自分に合うか」を判断した上で、市区町村の福祉担当窓口に電話して「ひとり親向けの資格取得支援について相談したい」と伝えるだけで始められます。
※この情報は2026年9月現在のものです。制度・金額・対象要件は改定される場合があります。最新の情報は市区町村の福祉担当窓口またはこども家庭庁のページでご確認ください。
参考・出典
- こども家庭庁「ひとり親家庭等関係」https://www.cfa.go.jp/policies/hitori-oya
- 厚生労働省「教育訓練給付制度」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/kyouiku.html
- 厚生労働省「マザーズハローワーク事業」https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_21046.html
