「住民税の通知書を見て、思ったより高いと感じた」「ひとり親控除を申告したはずなのに、なぜこの金額なんだろう」——そんな疑問を持つシングルマザーの方は少なくありません。
この記事では、住民税の仕組み・ひとり親控除で住民税がいくら下がるか・非課税になる条件・払えない場合の対処法を順に整理します。「申告漏れがないか不安」という方にも、「非課税ラインが気になって働き方をセーブしている」という方にも参考になる内容です。
知っておきたい住民税の仕組み:所得割と均等割

住民税は「なぜこの金額なのか」がわかりにくい税金の一つです。仕組みを理解しておくと、通知書の金額に納得しやすくなります。
住民税は前年の所得にかかる税金
住民税は、前年1月〜12月の所得を基に計算され、その翌年の6月から翌々年5月にかけて納付します。
たとえば2025年(1〜12月)の所得に対する住民税は、2026年6月から納付が始まります。これが「前年課税」と呼ばれる仕組みです。
見落としやすい注意点があります。離婚した年の翌年は、前年(婚姻中)の所得を基に住民税が計算されます。離婚後に収入が大きく減っても、住民税は前年の高い所得水準で計算されるため、「収入が減ったのに住民税が高い」という状況が1年間続くことがあります。
所得割(約10%)と均等割(年5,000円程度)
住民税は2つの部分で構成されています。一つは「所得割」、もう一つは「均等割」です。
| 種類 | 内容 | 税率・金額の目安 |
|---|---|---|
| 所得割 | 所得(収入から各種控除を引いた金額)に応じてかかる税 | 所得の約10%(道府県民税4%+市町村民税6%) |
| 均等割 | 所得に関わらず定額でかかる税 | 年5,000円程度(自治体によって異なる) |
住民税の多くは所得割が占めます。所得割はひとり親控除などの所得控除を差し引いた後の課税所得に約10%をかけて計算されます。均等割は所得が少なくても一定額がかかりますが、住民税非課税世帯には均等割も課税されません。
参考:総務省|個人住民税
ひとり親控除(住民税30万円)の軽減効果
2026年度分(2025年の所得)の住民税では、ひとり親控除の控除額は30万円です。これにより住民税の所得割が年間約3万円軽減されます。
| 年収(給与のみ) | 所得税の軽減額(目安) | 住民税の軽減額(目安) | 合計節税額(目安) |
|---|---|---|---|
| 200万円 | 約1.75万円 | 約3万円 | 約4.75万円 |
| 300万円 | 約1.75万円 | 約3万円 | 約4.75万円 |
| 400万円 | 約3.5万円 | 約3万円 | 約6.5万円 |
所得税は税率が所得によって変わるため節税額に幅がありますが、住民税は一律約10%のため、控除額30万円に対して約3万円の軽減効果が生まれます。「たった3万円」と感じるかもしれませんが、毎年確実に受け取れる節税効果です。申告漏れがあれば、その分だけ払い過ぎていることになります。
※上記は概算です。実際の税額は各種控除の組み合わせによって異なります。
2028年度から住民税の控除額が33万円に拡充
ひとり親控除は税制改正によって段階的に拡充される予定です。住民税の控除額は現在の30万円から33万円に引き上げられます。
適用時期は所得税と住民税で異なります。所得税の38万円への拡充は2027年分(2027年1月1日以後の所得)から、住民税の33万円への拡充は2028年度分以後の適用となります。また、ひとり親控除を受けられる所得要件が従来の500万円以下から1,000万円以下に緩和される改正は、所得税では2026年分から適用済みです。
拡充後は住民税の軽減額が年間約3.3万円となり、現在より約3,000円増える見込みです。今後も制度変更に注意して確認してください。
参考:財務省|令和8年度税制改正大綱
ひとり親控除の申告方法
ひとり親控除は自動的には適用されません。自分で申告することで初めて受けられます。
会社員・パートの方は年末調整で申告します。年末に勤務先から配布される「給与所得者の保険料控除申告書 兼 基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書 兼 ひとり親控除申告書」に必要事項を記入して提出します。フリーランスの方は確定申告で申告します。
特に注意が必要なのは、年の途中でひとり親になったケースです。離婚した年は年末調整のタイミングで申告が必要ですが、手続きが間に合わなかった場合は翌年の確定申告で申告できます(5年以内)。申告漏れに気づいたら、遡って申告することを検討してください。

ひとり親の住民税が非課税になる条件

住民税が非課税になると、税負担がなくなるだけでなく、保育料・医療費助成・給付型奨学金など多くの支援制度で有利になります。条件を確認しておきましょう。
合計所得135万円以下なら非課税
ひとり親・寡婦は、前年の合計所得金額が135万円以下であれば住民税が非課税になります。給与収入のみの場合、年収に換算すると約204万円未満が目安です。
合計所得135万円とは、給与収入から給与所得控除を差し引いた「給与所得」の金額です。給与のみの場合、年収約204万円までは給与所得が135万円以下となり、非課税の対象になります(給与所得控除が最低65万円〜適用されるため)。パートや給与収入が複数ある場合は合計で計算します。
子どもの人数や収入の内訳によって非課税ラインは変わります。詳しい目安については、以下の記事で整理しています。

事実婚状態だと対象外になる
ひとり親控除・住民税非課税の特例は、事実婚状態にある場合は対象外になります。
住民票の続柄欄に「夫(未届)」「妻(未届)」と記載されている場合は、法律上の婚姻関係はなくても事実婚とみなされ、ひとり親控除の対象外となります。この場合、住民税の非課税判定にも影響します。パートナーと同居・生計を共にしている場合は、住民票の記載内容を確認しておくことをおすすめします。
ひとり親が非課税ラインを意識した働き方は損になりやすい

「年収を上げると住民税非課税でなくなるから、働く時間を抑えよう」という考え方は、実際には手取りを減らしている可能性があります。
年収を抑えても非課税のメリットは限定的
住民税が非課税から課税になった場合の負担増は、数千円〜数万円程度です。一方、年収を抑えることで失う収入の方が大きくなるケースがほとんどです。
| 年収 | 住民税の目安 | 手取りの変化 |
|---|---|---|
| 200万円(非課税ライン付近) | 0円(非課税) | — |
| 220万円(ラインを超えた場合) | 約1〜2万円程度 | 収入増20万円-住民税増約1〜2万円=約18〜19万円の手取り増 |
| 250万円 | 約3〜5万円程度 | 収入増50万円-住民税増約3〜5万円=約45〜47万円の手取り増 |
この試算が示すように、非課税ラインを超えても住民税の増加分より収入の増加分の方が大きくなります。「もう少し働いたら損になるかも」と心配して働く時間を抑えると、結果として手取りの総額が減ることがあります。
ただし、保育料・医療費助成など住民税の課税状況によって受けられる支援が変わる制度もあります。自分のケースでどの制度に影響するかを確認した上で判断することが大切です。
児童扶養手当への影響もあわせて確認する
住民税非課税かどうかは、児童扶養手当の加算や一部の支援制度の判定に影響する場合があります。
たとえば、住民税非課税世帯を対象とした加算制度や、保育料・給付型奨学金の判定など、住民税の課税・非課税が関わる制度は複数あります。「ちょうど非課税ラインの付近にいる」という場合は、どの制度にどう影響するかを市区町村の窓口で個別に確認するのが確実です。一概に「非課税の方が得」とはいえず、自分の状況に応じた判断が必要です。

ひとり親で住民税が払えない場合の対処法

住民税が払えないと感じたとき、最も避けるべきことは「そのまま放置すること」です。滞納すると延滞金がつき、最終的には差し押さえになることもあります。払えない場合は、早めに相談することが大切です。
分割納付の相談ができる
住民税を一括で払えない場合、市区町村の税務窓口に相談することで分割納付に応じてもらえる場合があります。
住民税は通常、年4回(6月・8月・10月・翌年1月)に分けて納付する「普通徴収」か、給与から天引きされる「特別徴収」があります。それでも一度の納付額が重い場合は、窓口に「分割での支払いを相談したい」と申し出ることで対応してもらえることがあります。
住民税の支払いが難しい場合は、納期限を過ぎる前に市区町村の税務窓口に相談してください。延滞金がつく前の早めの行動が重要です。
申請すれば必ず通るわけではありませんが、相談すること自体はリスクがありません。「払えないけど言いにくい」と感じる方も多いですが、窓口は相談を受け付けるための場所です。
離婚直後は前年所得との差に注意
離婚した翌年は、前年(婚姻中)の所得を基に住民税が計算されるため、現在の収入に対して住民税の負担が重く感じやすい時期です。
婚姻中は世帯として収入があったため、前年の所得が高い水準になっていることがあります。離婚後に収入が大きく下がっても、住民税は前年の高い所得で計算されるため、1年間は「前の生活水準の税額」を払い続けることになります。これは一時的な現象で、翌年からは離婚後の実態収入を基に計算されます。
「離婚した翌年の住民税は一時的に重くなる可能性がある」ことを事前に把握しておき、その年分の資金を少し余裕を持って準備しておくことをおすすめします。
まとめ:ひとり親控除の申告漏れがないか確認を
ひとり親の住民税は、所得割と均等割で構成され、前年の所得を基に計算されます。ひとり親控除(住民税30万円、2028年度分以後は33万円)を申告することで、住民税の所得割が年間約3万円軽減されます。
住民税が非課税になる条件は合計所得135万円以下(給与収入のみなら年収約204万円未満)ですが、非課税ラインを超えることを恐れて働く時間を抑えるのは、手取りの総額を減らす可能性があります。支援制度への影響は個別に確認してください。
まず確認すべきは「ひとり親控除の申告漏れがないか」です。会社員はこの年末調整で、フリーランスは確定申告で忘れずに申告してください。申告するだけで毎年数万円の節税になります。
※本記事の税額試算は概算です。実際の税額は各種控除の組み合わせや自治体によって異なります。税制改正の適用時期・内容は変更される場合があります。個別の事情については税務署・市区町村窓口にご確認ください。
参考・出典
- 国税庁「No.1171 ひとり親控除」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1171.htm
- 総務省「個人住民税」https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/ichiran02.html
- 財務省「令和8年度税制改正大綱」https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/index.html
- こども家庭庁「ひとり親家庭等関係」https://www.cfa.go.jp/policies/hitori-oya
